テレワークやワーケーションという新しい柔軟な働き方が次々と導入されている現代社会において、主に民間企業がサテライトオフィスという労働環境の創造に踏み切っています。サテライトオフィスとは、企業の各拠点(本社や支社など)とは異なる場所でも働けるように整えられた労働環境を指します。

サテライトオフィスの普及によって不動産投資における新たな投資領域が生まれる可能性がおおいにある中、不動産投資家として何を学び、どのような目線で投資活動を行うべきでしょうか。

目次

  1. サテライトオフィスが注目を集めている理由
    1. 1.テレワークが浸透する流れができた
    2. 2.働き方改革の一環で、場所にとらわれない働き方が推奨されるようになった
    3. 3.会議や決裁の電子化、オンライン化が進んだ
  2. サテライトオフィスが注目を集める中、オーナーはどう立ち回るべきか
    1. 1.市場の環境をオンタイムで観察し続ける
    2. 2.先駆者となり得る投資家の動向を追う
    3. 3.早過ぎず遅過ぎないタイミングで市場に参加する
  3. サテライトオフィス導入企業の成功事例
    1. 日立製作所
    2. 富士通株式会社
    3. 株式会社あしたのチーム
  4. 成功事例から考えるサテライトオフィス運営

サテライトオフィスが注目を集めている理由

オーナー目線から考える サテライトオフィス導入企業の成功事例
(画像=Imaging L/stock.adobe.com)

サテライトオフィスが誕生し、新しい働き方として注目を集めているのには、どのような背景があるのでしょうか。サテライトオフィスが注目を集めている理由は以下の3点です。

  1. テレワークが浸透する流れができた
  2. 働き方改革の一環で、場所にとらわれない働き方が推奨されるようになった
  3. 会議や決裁の電子化、オンライン化が進んだ

一言で述べるならば、全社員が同じ拠点に集まらなくても仕事が行いやすくなったためです。サテライトオフィスの出現によって今後も障壁のない柔軟な働き方が拡がっていく余地は多いにあるといえるでしょう。

1.テレワークが浸透する流れができた

世界的に猛威を振るっている新型コロナウイルスの感染拡大によって、大人数が密に集まることをタブーとする潮流が急速に浸透しました。オフィス環境においても例に漏れず、3密(密接、密集、緊密)を避けることが求められました。

結果として、遠距離の出勤や大人数が集まる会議をしないテレワークが、都心のみならず地方にも波及しているという流れです。

2.働き方改革の一環で、場所にとらわれない働き方が推奨されるようになった

厚生労働省が2014年に公表した「テレワークではじめる働き方改革」にもあるように、在宅勤務やサテライトオフィス勤務といった柔軟かつ多様な働き方によって従業員の育児や介護、災害時の事業継続といったことが実現できると謳われています。働き方改革という大きな潮流の中で、サテライトオフィスの利用を推奨すべきであるという考え方が国家レベルで打ち出されていると捉えることもできます。

融通が利く働き方環境の企業のほうが、遠隔地に居住する優秀な人材を確保しやすくなることや、従業員への通勤手当や住宅補助を削減できるという理由からも、今後のサテライトオフィスの需要拡大に期待ができるかもしれません。

3.会議や決裁の電子化、オンライン化が進んだ

会議や決裁をオフラインでのみ行っている組織では、全出席者が同じ場所に集まれるように日時を調整して人数分の資料を印刷する手間や、決裁者間で文書を郵送する時間と費用といったアナログまたは紙文化特有のデメリットが多くあります。

オフラインによる業務には削減すべきコストが多くあることから、「Zoom」をはじめとするオンライン会議や、書面に近い感覚で電子決裁が可能になるワークフローシステムが新しい常識になる日が近いかもしれません。

実際に、デジタル・ガバメント閣僚会議という行政のIT化を推進する組織も組成されており、公的機関においても「デジタル・ガバナンス」の実現によりデジタル化社会に対応することを目標として掲げています。

以上3点の理由により、国家レベルで働き方が見直されている中において、柔軟かつストレスフリーな働き方の実現に寄与できるサテライトオフィスは、今後の新しい労働環境としての大きな可能性を秘めているといえるでしょう。

サテライトオフィスの需要が高まれば、サテライトオフィス用の不動産にも需要が生まれ、不動産投資においても新しいマーケットの形成が期待できそうです。

サテライトオフィスが注目を集める中、オーナーはどう立ち回るべきか

サテライトオフィスが注目され、不動産投資の分野にも影響を及ぼし得るという現段階において、オーナーとしてどのように考え、行動するべきでしょうか。

適切なタイミングでサテライトオフィスへの投資に参加するためには、以下の3点を念頭において立ち回ることが重要といえるでしょう。

  1. 市場の環境をオンタイムで観察し続ける
  2. 先駆者となり得る投資家の動向を追う
  3. 早過ぎず遅過ぎないタイミングで市場に参加する

1.市場の環境をオンタイムで観察し続ける

サテライトオフィスを含む、いわゆる新興市場は市場の未成熟さと制度の不十分さから、法律や行政の政策等に大きな影響を受けやすいといえます。ルールの変更1つで市場を取り巻く環境が急激かつ大幅に変化し、場合によっては市場全体が衰退してしまうこともあり得ます。

市場に関する情報に対して常にアンテナを張ることで、新鮮な情報をオンタイムでキャッチし、自分の投資判断の材料にできるように市場の環境を観察しておきましょう。

2.先駆者となり得る投資家の動向を追う

金融機関からの融資を伴って巨額の資金を動かす不動産投資において、一般の個人投資家が成功例も失敗例もない中で大きな投資を行うのは危険であるといえるでしょう。何が成功要因で、何が失敗要因なのかという前例やデータがないため、投資方針の立案やリスクが顕在化した際の対処法が分からないからことが多いためです。

実際に投資をする前に、サテライトオフィス投資の先駆者がどのような投資を行い、どのような結果を出しているのか、成功および失敗の要因は何なのかといった情報を分析することが重要といえそうです。企業であっても個人投資家であっても、先進的なサテライトオフィス投資を行っている先駆者の投資の動向を注視しましょう。

3.早過ぎず遅過ぎないタイミングで市場に参加する

市場の環境を常によく観察し、先駆者となり得る投資家の動向を追いつつ、早過ぎず遅過ぎないタイミングで実際に投資を開始してみましょう。

早過ぎてはいけない理由は、新興市場ゆえの環境変化の早さという観点から市場がある程度成熟し、投資環境が磐石になってから市場に参加するほうが安全性を確保しやすいといえるためです。自分が巨額を投じた後に法律が改正され、自分の投資手法が通用しないものになったり、投資としての市場自体がなくなったりすることもあり得ます。

遅過ぎてもいけない理由は、先駆者に大きなシェアを取られたり、自分の投資手法が先駆者の二番煎じになったりしてしまうと投資としてのうまみが市場に残っていない状態になる可能性があるためです。

早過ぎず遅過ぎないタイミングで市場に参加するためには、市場が磐石になり、先駆者が少しずつ成功を収めはじめたタイミングで、自分なりの手法を用いて小さくはじめてみるということが得策でしょう。試行錯誤を繰り返しながら成功パターンをつかみ、投資規模を徐々に大きくしていくという投資活動も選択肢の一つです。

サテライトオフィス導入企業の成功事例

労働環境としてサテライトオフィスをすでに導入している企業もあり、サテライトオフィスの運営を行っている企業の事例は今後のサテライトオフィスの運営、ひいては投資をするうえでの貴重なデータになりそうです。

以下の3社はサテライトオフィスの導入および運営を成功させている企業であり、彼らの成功事例は注目に値します。

  • 日立製作所
  • 富士通株式会社
  • 株式会社あしたのチーム

日立製作所

日立製作所は2017年10月から「@Terrace」という日立グループの全従業員が利用可能なサテライトオフィスを首都圏近郊に導入し、1日に1,800人が利用することもあるといいます。

100平方メートルのオフィス内には31台の常設PCや特大スクリーン、容易にレイアウトの変更が可能なテーブル、一人で集中して仕事やオンライン会議ができる個人用ブースといった多様な働き方を可能にするツールが揃っており、自由で柔軟なオフィス空間を作り上げています。

ワークスペースとしてのみならず、日立グループが導入している働き方改革を促進させる製品やソリューションを紹介または提案するショールームとしても活用する計画があり、今後のサテライトオフィス運用に新しい形を付加するかもしれません。

富士通株式会社

富士通株式会社は2017年以降、「F3rd」(社内サテライト)、「F3rd+」(社外サテライト)という2種類のサテライトオフィス制度を導入しており、全社員(約3万5,000人)を対象に、どこにいてもオフィスと同じように仕事ができる環境を作り、場所にとらわれない柔軟な働き方を実現しています。事業所の数が多い同社は、サテライトオフィスの導入によって社員の移動時間を削減させ、生産性の向上につなげているということです。

サテライトオフィスへの投資との関連では、同社の社内アンケートで社外サテライトオフィスの増設を望む意見が非常に多いとのことから、今後は社外の物件をサテライトオフィスとして借りたいというニーズが生まれてくる可能性が予測できます。

株式会社あしたのチーム

株式会社あしたのチームは、東京都中央区に本社を置く人材関連の企業で、徳島県三好市に2013年からサテライトオフィスを導入しています。

同社によれば、サテライトオフィスの導入によってインターネット環境があれば遠隔地でも都市部と同等の仕事をすることができるため、サテライトオフィスで行う業務と本社で行う業務を適材適所に分業できるようになり、仕事の生産性が上がったといいます。

加えて、都内の企業でありながら地元人材の採用および育成ができるという点に会社としての特異性を見出し、地元での雇用を創出して地方創生に大きく貢献したことで県からの表彰を受けました。また、地域社会への貢献活動によってメディアに取り上げられ、CSR活動による企業価値の向上や企業PRという派生的な恩恵も享受しています。

成功事例から考えるサテライトオフィス運営

サテライトオフィスの導入によって、導入企業は働き方の柔軟性や生産性を向上できる、地方創生に寄与できる、自社のPRになるといった多方面のメリットを享受できるようになります。

今後も働き方改革の流れを受けて、場所にとらわれない働き方を実現させるためにサテライトオフィスの導入を検討する企業は増えると考えられるのではないでしょうか。

サテライトオフィスのニーズが高まることで、サテライトオフィスとして利用できる不動産のニーズも高まるかもしれません。今後の市場の動きや既に運営を成功させている企業の事例を注視して、サテライトオフィスへの投資に参入するというのも、オーナーとしての選択肢の一つです。

【関連記事】
サテライトオフィスのオーナーが必要なイニシャルコスト