マンション投資とサテライトオフィス投資の5つの違いとは?
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「不動産投資」と聞くと最初にマンション投資を思い浮かべる投資家が多いかもしれません。しかしオフィスや商業ビル、駐車場といった種別があります。その中でも、今後注目を集める可能性が高いのは「サテライトオフィス」です。実際に2013~2018年にかけて新規開設数および累計開設数ともに5倍以上に伸びています。

<年度別サテライトオフィス開設数(地方公共団体調査)>

開設数(減少)累計開設数
2013(平成25)年度28(8)114
2014(平成26)年度56(5)165
2015(平成27)年度73(12)226
2016(平成28)年度104(15)315
2017(平成29)年度129(25)419
2018(平成30)年度151(21)549
2019(令和元)年度145(40)654

参照:総務省「サテライトオフィスの開設状況について」

働き方改革や新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「テレワークの普及」「オフィスの分散化」という大きな潮流の中で、サテライトオフィスは今後もさらに普及が加速するかもしれません。本記事では、従来のマンション投資とサテライトオフィス投資のスキームについて述べたうえで、両者の違いについて解説します。

目次

  1. マンション投資のメリット・デメリット
  2. サテライトオフィス投資とは?
  3. マンション投資とサテライトオフィス投資の5つの違いとは?
    1. 賃貸需要
    2. 初期投資の費用
    3. 募集期間、解約予告期間
    4. 火災および漏水の発生リスク
    5. 原状回復工事
  4. 特徴を理解して投資対象を吟味しましょう

マンション投資のメリット・デメリット

マンション投資(1棟または1部屋)は住居への投資のため、一般の個人投資家であっても賃料相場や賃貸需要の多寡、間取りの良し悪しについて感覚的に分かりやすい点が特徴です。マンション投資の主なメリット・デメリットは、以下の項目が挙げられます。

メリット・一般の個人投資家にもなじみやすい
・専門に取り扱う不動産業者が多いため、投資の間口が広い
・不動産投資の中では物件の流通量が多いため、流動性が高い
デメリット・成熟した市場であるため、掘り出し物件を見つけにくい
・プロおよび個人の投資家が多く参入しているため、競争が激しい

不動産投資の分野として最も市場が整備されているともいえるため、良くも悪くも多くの既存参入者がおり新規参入も比較的しやすいといえるでしょう。

サテライトオフィス投資とは?

サテライトオフィス投資とは、企業や個人事業主のためのワークスペースとして貸し出し賃料収入を得る形態の不動産投資です。1棟、または1部屋の物件を購入して貸し出す形と、レジデンス物件をサテライトオフィスに転用にして貸し出す形があります。サテライトオフィス投資は、マンション投資と比べると参入者がまだ少ない傾向です。

そのため一般の個人投資家にはなじみが薄いものの「今後の市場の成長を見込める」という特徴があります。サテライトオフィス投資の主なメリット・デメリットは、以下の通りです。

メリット・時間貸しなどのフレキシブルな賃貸形式をとれる
・コワーキングスペースとして不特定多数の借主に同時に賃貸することができる
・未成熟な市場であるため、掘り出し物件を見つけられる可能性がある
・マンション物件よりも高い家賃が設定できる
デメリット・設備面や契約内容における専門性が高い
・初期投資に大きな費用がかかる可能性がある
・流通量が少なく、流動性が低い
・マンション物件よりも景気に左右されやすい

良くも悪くも市場が未成熟であり高度な専門性が求められる局面もあるため、投資家自身の努力が必要になる可能性が高い分、得られるリターンも大きくなる見込みがあるといえるでしょう。

マンション投資とサテライトオフィス投資の5つの違いとは?

マンション投資とサテライトオフィス投資では、投資の根本的なスキームは同じですが、住居とオフィスという物件種別の違いによる相違点もあります。それぞれにおいて有利な点と、そうでない点があるため、投資を開始する前に特徴をしっかりと理解しましょう。具体的にマンション投資とサテライトオフィス投資の違いは、以下の5つです。

  • 賃貸需要
  • 初期投資の費用
  • 募集期間、解約予告期間
  • 火災および漏水の発生リスク
  • 原状回復工事

賃貸需要

賃貸需要とは「どのエリアにどのような目的で物件を借りたいニーズがあるか」ということです。マンションとサテライトオフィスでは、物件が所在するエリアが大きく異なります。物件所在エリアが異なるということは、物件を借りる層のニーズ(賃貸需要)もマンションとサテライトオフィスでは異なると考えられるでしょう。

2019年度におけるサテライトオフィスの開設数を都道府県別に見ると、多い順に北海道、徳島県、沖縄県です。サテライトオフィスが東京や大阪などの大都市圏から離れたエリアに所在している一方で、賃貸住宅(アパート、マンション、一戸建てなど)の物件数(ポータルサイトに掲載されている件数)を都道府県別に見ると多い順に東京都、京都府、大阪府です。

<都道府県別サテライトオフィス開設数トップ10(令和元年度末時点)>

順位都道府県開設数
1位北海道74
2位徳島67
3位沖縄57
4位宮城50
5位島根45
6位長野36
7位福島27
8位和歌山24
9位宮崎21
10位兵庫20

参照:総務省「サテライトオフィスの開設状況について」

サテライトオフィスの開設数ベスト3北海道、徳島、沖縄の賃貸住宅物件数は、東京都の3分の1程度の件数しかありません。逆の数値を比較すると、賃貸住宅における物件数ベスト3のサテライトオフィス合計は北海道の6分の1程度の数となっています。サテライトオフィスと賃貸住宅の物件所在エリアの違いから両者間の賃貸需要には違いがあるといえそうです。

初期投資の費用

サテライトオフィスに投資する場合、以下2つの環境整備によってマンションへの投資よりも初期費用がかさむ可能性があります。

  • 最適なインターネット環境
  • 強固なセキュリティシステム

サテライトオフィスは、企業の主たる活動拠点から離れた場所でも支障なく業務を遂行できるようにするために設置されたワークスペースです。そのため設置場所によっては一度に多くの人数が利用することも想定されます。またネット環境は、マンションよりも高速なだけでなく大容量が求められる傾向です。

地方の古民家をリノベーションしたりオフィス以外の用途で使われていた物件をコンバージョンしてサテライトオフィスを新設したりする場合は、ネット環境に加えてセキュリティシステムも万全にしておくべきでしょう。サテライトオフィスにおいても通常のオフィスと同様に企業の重要書類や個人情報などが置かれることもありえます。

そのため日時によっては利用者がおらず無人のオフィスになっていることも想定できるでしょう。ICカードや暗証番号式のロック機能、24時間体制の警備サービスなどを導入してセキュリティを万全に整えるのが得策といえそうです。

募集期間、解約予告期間

一般的にマンションとオフィスでは、募集期間(前入居者との契約終了後、入居者募集を開始してから次の入居者が決定するまでの期間)が異なります。例えば株式会社タスが公表している「賃貸住宅市場レポート」によると、2020年6月期における東京23区の賃貸住宅(マンション、アパート)の募集期間指標は2.82ヵ月でした。

一方でザイマックス不動産総合研究所が2012~2017年に集計したデータによると、東京23区のオフィスの平均的な募集期間(中央値)は5ヵ月です。募集期間が長いということは、一度空室が出ると次の入居者を見つけるまでのコスト(逸失賃料、時間、手間等)が多くかかると想定されます。住宅よりもオフィスの募集期間が長くなる主な理由は、以下の2つです。

  • 借主が法人である場合が多く意思決定に時間を要する(社内稟議など)
  • 借主側での物件精査の項目(設備面や契約書面上の条項等)が多い

また、解約を通知しなければならない「解約予告期間」も異なります。賃貸住宅は退去日の1ヶ月~2ヶ月前、賃貸オフィスは退去日の6ヶ月~1年前には通知するのが一般的です。

そのため「オフィスはマンションよりも入居者募集に時間や手間がかかる可能性がある」という想定をしておくといいでしょう。

火災および漏水の発生リスク

マンションとサテライトオフィスでは、室内の設備が異なるのが一般的です。サテライトオフィスには、水回りや火を扱う設備(浴室、トイレ、キッチンなど)が少なかったり全くなかったりすることもあります。そのため室内で火災や漏水が発生するリスクがマンションよりも低いといえるでしょう。火災や漏水が発生すると「自室の家具や設備が損傷する」「近隣の部屋に対して損害賠償責任を負う」などのリスクがあります。

火災や漏水による損害発生リスクは、火災保険などで一定程度リスクヘッジすることが可能です。しかし十分な範囲をカバーするためには、保険料を上乗せして特約を付ける必要もあります。火災および漏水の発生リスクは、マンション投資において特に留意すべきポイントの一つです。

原状回復工事

マンションとサテライトオフィスでは、原状回復工事においても違いがあります。具体的には、以下の2点で違いが現れやすいでしょう。

  • 費用負担の範囲
  • 工期の長さ

賃貸住宅での原状回復工事の費用負担は「借主の故意や過失による損耗は借主負担」「通常使用による損耗を含めその他の項目にかかる費用は原則として貸主が負担する」というのが一般的です。オフィスでの原状回復工事においては、通常使用による損耗も含めてすべての項目を原則として借主が負担する場合が多くあります。

原状回復工事の費用負担区分は、賃貸借契約書に記載されるのが通例のため、入居者の退去時に紛争にならないよう契約締結時に相互理解をしておくのが得策です。オフィスの原状回復の工期については、通常のクリーニングに加えて床下配線の撤去や配電盤の原状回復といった大がかりな作業の多さが長くなる大きな理由の一つです。

一般的なマンションの原状回復工事は早ければ2~3日で完了しますが、オフィスの場合は1ヵ月以上かかることもあります。原状回復の工期は、次の入居者の入居可能時期に関わる重要な事項のため、マンションとオフィスの違いとして認識しておきましょう。

特徴を理解して投資対象を吟味しましょう

同じ不動産投資というくくりの中でもマンション投資とサテライトオフィス投資では、投資としての根本的なスキームは同じです。しかし物件運営において大きく違いが出る点もあります。それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解して自分の方針に合致する投資対象を選択しましょう。

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