新型コロナウイルスによって収入が減り住宅ローンを返済できない人が増えています。そこで2020年12月1日から新たにスタートしたのが「コロナ版ローン減免制度」です。住宅ローンをはじめ各種ローンの返済に困った人が利用できる制度です。どのような制度なのか、解説していきます。

コロナ禍で住宅ローンを返せない人が増えている

コロナ禍で住宅ローンが払えないときに利用できる「ローン減免制度」とは
(画像=chinnarach/stock.adobe.com)

2020年から感染が続いている新型コロナウイルスの影響で仕事を失ったり収入が減ったりする人が増え住宅ローンの返済にも支障が出ています。住宅金融支援機構の調べによると、住宅ローンの返済条件を変更した人の数は2020年4月以降に急増し、6月1,483件、7月1,205件、8月987件に上っているとのことです。住宅ローンは延滞が2~3ヵ月続くと金融機関から催告や督促状が届く傾向にあります。

目安としては、3ヵ月を超えると信用情報機関に載り、借り入れやクレジットカードの使用が制限されます。さらに滞納が継続し6ヵ月以上になると住宅が競売にかけられる可能性が高まるでしょう。競売にかけられてしまうと市場価格よりもかなり安い価格で落札されるため、住宅を失っただけでなく債務が残るケースも少なくありません。

事情があって住宅ローンを返済できなくなった人たちを「住宅ローン難民」と呼んでいます。新型コロナウイルスという一種の災害によって住宅ローン難民になった人が自宅を失うのは何としても避けなければなりません。そのような社会情勢を鑑み、新型コロナウイルスで住宅ローンなどの返済が厳しくなった人のために「コロナ版ローン減免制度」が新設されました。

新設されたローン減免制度とは

コロナ版ローン減免制度は、個人と個人事業主を対象に新型コロナウイルスの影響で「仕事を失った」「給料が下がった」「売上が落ちた」などの理由で各種ローンの返済が困難になった人を救済するための制度です。すでにある「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の特則として制定されました。

従来は、東日本大震災のような自然災害が対象でしたが、今回新型コロナウイルスで影響を受けた人も救済の対象に加えられたのです。具体的には、以下のような個人や個人事業主が利用できます。

  • 新型コロナウイルス感染症の影響で失業や収入の減少によりローンが返済できない人
  • 資産より負債が多く将来の収入の見通しが立たず返済できない人
  • 住宅ローンに加え新型コロナウイルス感染症の影響でカードローン等その他のローンの負担が大きくなり返済できない人
  • 事業を再建したいと考えているが既存債務の負担が大きい人
  • 事業を廃業して再スタートしたいと考えているが債務を返済できない人

出典:金融庁

対象になる債務は、以下の通りです。

  • 2020年2月1日以前に負担していた既往債務
  • 2020年2月2日以降2020年10月30日までに新型コロナウイルス感染症の影響による収入や売上等の減少に対応することを目的として「政府系金融機関の新型コロナ感染症特別貸付」「民間金融機関における実質無利子・無担保融資」「民間金融機関における個人向け貸付」で借りた債務

出典:金融庁

新型コロナウイルス感染症で影響を受けた人の救済に特化した制度のため、コロナ以外の理由で返済困難になった人は利用することができません。

ローン減免制度の5つのメリット

ローン減免制度は、対象になる人が利用をためらわないように以下のようなメリットがあります。

専門家の支援を無料で受けられる

専門家に手続きを依頼する場合に心配なのが費用の問題ですが、弁護士等の「登録支援専門家」による支援を無料で受けることができます。相談できる専門家は弁護士、公認会計士、税理士、不動産鑑定士です。

財産の一部を残せる可能性がある

依頼すると財産をすべて没収されるのではないかと不安になる人もいるでしょう。この制度では財産の一部を手元に残せる場合があります。

債務整理しても個人信用情報に記載されない

借金を返済できない場合、個人の信用情報が登録されるという大きな問題があります。しかしこの制度によって債務を整理した場合は、個人情報が登録されることがありません。そのため新たに借り入れが必要になったときの審査に影響が出ることはありません。

住宅を失わなくてすむ

「住宅資金特別条項」を利用すれば、住宅ローンの返済を続けながらその他の債務を整理することができるため、住宅を失うことがありません。

連帯保証人に請求がいかない

この制度では、連帯保証人に請求がいくことはありません。連帯保証人に迷惑をかけたくないために債務整理をためらう人が多い現実がありますので、利用するハードルが低くなります。

ローン減免制度のデメリット

利用しやすいように配慮された制度ではありますが、デメリットもあるので心に留めておく必要があります。

法的整理ではなく私的整理となる

この制度は法的整理ではありません。私的整理のため、債権者の同意が得られない場合は債務整理が成立しない場合があります。同意しない債権者がいる場合は取り下げて法的整理に切り替えるか、通常の債務整理になる可能性があります。その場合はローン減免制度のメリットを得ることができなくなります。

一括請求される場合がある

また、何らかの事情により途中で取り下げを行った場合、支払いが猶予されていた債務の元金・利息を一括請求される場合があります。住宅ローンを保証会社が代位弁済していた場合は、団体生命信用保険を解除される可能性もあります。

すべての債務者が救済されるわけではない

先に紹介したように債務の対象期間や条件が決っていますので、すべての債務者が救済されるわけではないことにも留意する必要があります。自分が負っている債務が制度の対象になるのか、メリット・デメリットについてあらかじめ専門家に相談することが望ましいでしょう。

住宅ローンが払えなくなったときの対処方法

では、住宅ローンローンが払えなくなったとき、どのように対処したらよいでしょうか。住宅ローンの返済に困った場合は、まず金融機関に相談して返済計画の見直しをしてもらいます。ローン減免制度を利用する前に、支払期間を延長するなど返済できる方法がないか考えます。住宅ローンを最初に相談するのは住む場所を確保する必要があるためです。

住宅ローンの返済はほかの債務と切り離して返済を続けることが望ましいといえます。住宅ローンの返済計画を見直したとしても、その他の債務を返済できない人もいるでしょう。その場合住宅ローン以外の債務返済を猶予してもらうため、ローン減免制度の申請を行います。手順は以下の通りです。

  1. 最も多額のローンを借りている金融機関等へガイドラインの手続着手を希望することを申し出る
  2. 金融機関等から手続着手について同意を得たあと、「登録支援専門家」による手続支援を依頼する
  3. 金融機関等に債務整理を申し出て、申出書のほか財産目録などの必要書類を提出する
  4. 登録支援専門家の支援を受けながら、金融機関との協議を通じて、債務の内容を盛り込んだ「調停条項案」を作成する
  5. 登録支援専門家を経由して、金融機関等へガイドラインに適合する調停条項案を提出・説明する
  6. 債務整理の対象にしようとする全ての借入先から同意が得られた場合、簡易裁判所へ特定調停を申し立てる
  7. 特定調停手続により調停条項が確定すれば債務整理が成立する

出典:中小企業庁

制度の詳細は下記のサイトで確認することができます。

一般社団法人自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関 (dgl.or.jp)

まずは普段の生活を取り戻す

新型コロナウイルスという予期せぬアクシデントに見舞われローンの返済困難に陥った多くの人たちがいます。返済できなくなったのは決して自分の責任ではありません。返済できないことを負い目に感じることなく滞納する前に金融機関に相談することが大事です。ローン減免制度を利用し、まずは日常生活を取り戻すことが望まれます。