【レベル別】空室対策のポイント 軽症・中等症・重症それぞれのタスク
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不動産投資の空室対策についての情報は、ネット上にたくさんあります。しかし個別の状況を考慮せず「このようにするべき」とひとくくりに書かれているケースも少なくありません。そこで本稿では、実践で使えるよう退去してからの期間によって「軽症」「中等症」「重症」と3つのレベルを設定しそれぞれのレベルに応じた効果的な空室対策を紹介します。

管理会社に委託している場合も空室対策の知見は必要

一般的な不動産投資では、客付け(入居者募集〜賃貸借契約の過程)まで含めて運用を管理会社にアウトソースしているケースが多いとはいえ「オーナーが空室対策について何も知らなくてよい」ということではありません。管理会社や仲介会社の業務や提案が「適切かどうか」を判断するためには、オーナーにも空室対策の基礎知識が必要です。

基礎知識を備えるための情報をここではお届けします。なお1棟物件と区分マンションでは、空室対策の考え方が異なる面もあるため、本稿では前者(1棟物件)を前提に解説していきます。

軽症レベルの空室対策(目安:退去通知~退去後1ヵ月)

軽症レベルの空室対策の考え方:先延ばしは長期化のリスク

空室対策で大事なことは「先手、先手で効果的な対策を実行すること」です。例えば退去後1ヵ月経過しても空室の場合、管理会社によっては「もう少し様子見しましょう」といった受け身の姿勢や状況を打開する提案が一切ないケースもあります。しかしこの段階でなにも手を打たず退去後2~3ヵ月経過してから空室対策に着手するのでは遅いといえるでしょう。

場合によっては、空室期間が「4ヵ月以上」「半年以上」など長期化するリスクが出てきます。こういった厳しい経営状況に追い込まれないために退去後1ヵ月経過しても内見申し込みが少ないときは、後ほど紹介する対策を講じたほうが賢明でしょう。また過去の状況から入居者募集で苦戦が予想される場合は、退去通知を出した直後から積極的な空室対策に踏み切るのも一案です。

「軽症レベル(退去通知〜退去1ヵ月後)」の具体的な空室対策例には、以下のようなものがあります。

  1. 「敷金0・礼金0」を設定する
  2. 「フリーレント1ヵ月」を設定する

空室対策1:「敷金0・礼金0」を設定する

「敷金・礼金の負担が少ないこと」を打ち出して空室対策を行うときの注意点は「中途半端な設定にしないこと」です。例えば今までの設定が「敷金2ヵ月・礼金1ヵ月」だった場合、これを「敷金1ヵ月・礼金1ヵ月」「敷金2ヵ月・礼金0ヵ月」といった設定を検討しているオーナーもいるかもしれません。しかしこれでは物件情報をパッと見たときのインパクトがありません。

そのため効果的な空室対策を重視するのであれば「敷金0・礼金0」と設定することがおすすめです。一方、「敷金0・礼金0」物件は初期費用がなくても借りやすいため、入居者の質が落ちるデメリットもあります。

空室対策2:「フリーレント1ヵ月」を設定する

「敷金0・礼金0」の競合物件が多いエリアでは「敷金0・礼金0」に設定しても大きな差別化とはなりません。こういった経営環境であれば「敷金0・礼金0」にプラスして「フリーレント(家賃なし期間)1ヵ月」を設定するのが有効です。ただエリアによっては、次の「中等症レベル」でフリーレントを実行すれば十分なケースもあるでしょう。

これらの判断は、管理会社の意見をヒアリングしたうえでするのが得策です。

中等症レベルの空室対策(目安:退去後1~3ヵ月)

中等症レベルの空室対策の考え方:長期空室になるか否かの局面

中等症レベルでどのような空室対策を実行するかは、非常に重要です。なぜなら「長期空室になるか否か」の重要な分かれ目となるからです。特に1棟物件を所有していて複数の部屋に中等症レベル以上の空室が目立つ場合は、重要な局面となりかねません。ここで効果的な空室対策を打ち出せれば損失を最小限に抑えることが期待できます。

逆に複数の中等症以上の空室を放置すれば利回りが大きく下がってしまうでしょう。中等症レベル(目安:退去後1~3ヵ月)の具体的な空室対策例は以下の通りです。

  1. フリーレント期間を増やす
  2. 家具家電プレゼント
  3. 広告料(AD)を増やす(あるいは設定する)

空室対策1:フリーレント期間を2ヵ月にする

「軽症レベルの空室対策」で1ヵ月分の設定だったフリーレント期間を2ヵ月に増やすことも有効です。ただしフリーレントは扱いが難しい面もあるため、以下のような注意点も押さえておきましょう。

  • 注意点1:短期で退去されてしまうと収支に大きな影響がある
  • 注意点2:家賃延滞の常連のような質の悪い入居者と契約してしまう可能性がある

注意点を十分に踏まえたうえでフリーレント期間を長く設定する場合は「入居者審査のハードルを下げない」「安定収入のある人に限定する」といった工夫が必要でしょう。

空室対策2:家具・家電プレゼント

一人暮らし向けの賃貸物件で有効な空室対策が「家具・家電プレゼント」です。特にはじめての一人暮らしが増える繁忙シーズンなどに実行すると効果的でしょう。この対策を打つときの注意点は、若い世代に好まれる家具・家電をそろえることです。また新品やそれに近いアイテムを選ぶことも大切となります。

そのため「どんな家具・家電が若い入居者に好まれているのか」について管理会社や量販店をリサーチしたうえでアイテムを購入するのが無難です。なお、この空室対策には、入居時に「家具・家電は必要ない」といわれたときにアイテムを移動・保管しなくてはならないデメリットがあります。

空室対策3:広告料(AD)を増やす(あるいは設定する)

広告料(AD:Advertisement)とは、仲介手数料以外に仲介会社などへ支払う成功報酬です。一般的に家賃の1~3ヵ月分を設定しているケースが多い傾向です。この広告料(AD)の設定を増やすほど不動産会社(営業担当)のモチベーションが上がりやすいため、相場よりも高く設定するオーナーもいます。ただしエリアによって広告料(AD)の相場は異なる傾向です。

そのため管理会社や地域密着の仲介会社などに相場を確認してから設定するのがよいでしょう。

重症レベルの空室対策(目安:退去後3~6ヵ月)

重症レベルの空室対策の考え方:あらゆる選択肢を試す

3~6ヵ月以上空室期間が長引くと「待ったなし」の状況です。まず管理会社とともに「なぜ入居者が決まらないのか」について原因をしっかり分析したうえでウィークポイントを解消したりウィークポイントを上回る魅力を提示したりすることが重要となります。この段階の空室対策例は、以下の通りです。

  1. フリーレント期間をさらに増やす
  2. 初期費用0円にする
  3. 家賃を下げる(実質1,000~2,000円程度)

空室対策1:フリーレント期間をさらに増やす

「中等症レベルの空室対策」で2ヵ月分の設定だったフリーレント期間をさらに増やし3ヵ月以上に設定します。フリーレントは、入居者にとって魅力的な条件です。そのためフリーレント期間を強化することで「最寄り駅から離れている」「建物が築古」など厳しい条件の賃貸物件でも入居者決定力がアップする可能性があります。

空室対策2:初期費用0円にする

本来、入居者が負担すべき初期費用をオーナーが負担するものです。具体的には、仲介手数料や火災保険料などを負担またはキャッシュバックします。フリーレントと組み合わせると入居者にとって大きなメリットとなるでしょう。

空室対策3:家賃を下げる

管理会社によっては「家賃を下げる」という対策を軽症レベルの段階で提案してくるケースもあります。しかし家賃は一度下げれば元に戻すのが難しいのが現実です。また長期空室が発生するたびに家賃の値上げを繰り返せば収支が急速に悪化していきかねません。こういった背景から「家賃を下げる」のは最終手段と考えたほうがよいでしょう。

値下げする場合も最小限の値下げ幅(1,000~2,000円程度など)から試してみるのが賢明です。

あらゆる空室対策をしても入居者が決まらない場合は?

重症レベルの空室対策をしても入居者が決まらない場合、これまでの延長線上で考えるのではなく経営環境を根本的に変える必要があります。具体的にどんな選択をするかは、エリアや物件状況によって大きく異なるでしょう。一例として挙げるのであれば以下のようなものがあります。

  1. 入居者に人気のある住宅設備を導入する
  2. リノベーションで再生する
  3. 賃貸物件を売却する
  4. サテライトオフィスなどに用途転換する

賃貸住宅のニーズが強いエリアなら1や2の選択がよいでしょう。不動産マーケットが好調なタイミングなら適正価格で売却しやすいため3の選択が視野に入ります。賃貸住宅のニーズが弱まっているエリアやオフィス需要があるエリアでは4の選択がおすすめです。