不動産投資というと、アパートやマンションの経営を思い浮かべる方が大半だと思いますが、「不動産」を活用する投資はそれがすべてではありません。特に、働き方の多様化に伴ってオフィスのあり方も多様化しており、ますます多くなっていくニーズに応える形でオフィスの価値観も大きく変わりつつあります。

働き方改革の影響で多様な働き方が広がりつつあったところに起こったのがコロナ禍です。人が密集したり接触したりすることを避ける必要があるため、テレワーク(リモートワーク)などオフィス以外で働くことが推奨されました。後述しますが、実際にテレワークがかなり浸透したことはデータからも明らかになっています。

コロナ禍が契機になったとはいえ、その影響を差し引いてもこの傾向は今後さらに進むでしょう。そんな時代に存在感を増していくのが、「シェアオフィス」です。すでに大都市圏では認知や普及が進みつつあるシェアオフィスですが、全国的な流れとなるのはまだまだこれからです。そんな「シェアオフィスの時代」を見すえた不動産投資のあり方、シェアオフィス運営の有望性について解説します。

目次

  1. コロナ禍で在宅、リモートワークが浸透
  2. しかし在宅勤務には限界も
  3. シェアオフィスの時代に向けて大手不動産会社は動き出している
  4. 野村不動産、東急不動産のシェアオフィス事例
    1. 野村不動産「H1T」
    2. 東急不動産「ビジネスエアポート」
  5. オーナー目線でのシェアオフィス運営
    1. シェアオフィス運営のメリット
    2. シェアオフィス運営のデメリット、注意点

コロナ禍で在宅、リモートワークが浸透

コロナ禍での新しいオフィスの考え方 シェアオフィスが人気なわけ
(画像=LIGHTFIELD STUDIOS/stock.adobe.com)

新型コロナウイルスの感染拡大は私たちの生活にさまざまな変化をもたらしましたが、そのなかでも特に大きな潮流となっているのが在宅勤務やテレワークの浸透です。国が音頭をとって働き方改革を進めていた矢先ということもあり、コロナ禍に背中を押されるような形でテレワークを全面的、部分的にかかわらず導入した企業が増えました。

国土交通省が実施した「テレワーク人口実態調査」の平成31年度版にも、その傾向が顕著に表れています。テレワーク制度が勤務先にあるテレワーカー427人のうち、勤務先からテレワークに移行する何らかの指示や推奨があった人の割合は67%に上り、実際に半数以上の人がテレワークを実施しました。感染対策の一環として実施した人の割合は38.3%となっており、改めてコロナ禍がリモートワークを普及させた契機になったといえるのではないでしょうか。

しかし在宅勤務には限界も

出社することなくテレワークによって仕事を進めることが推奨されるものの、それでは在宅勤務が最善かというと、そうともいえない部分があります。人によっては在宅だと家族がいるため、その影響もあって仕事に集中できないといった声も上がっています。テレワークに関するさまざまな調査結果を見ても、「家では集中できる環境を得にくい」といったニュアンスの回答が必ず一定数を占めています。

感染対策や多様な働き方の実現というメリットを実現するためにもテレワークは普及するべきと考えられているものの、在宅だとなかなか仕事に集中できないといった問題が浮き彫りになっています。このことからわかるのは、「会社でも自宅でもない場所」へのニーズです。

シェアオフィスの時代に向けて大手不動産会社は動き出している

そこで注目されているのが、シェアオフィスです。シェアオフィスは「オフィス」と名づけられているようにオフィスの一種ではあるのですが、複数の人で共有する考え方で設けられた「仕事のためのスペース」です。利用者が自由に使えるオフィススペースと仕事に必要なネット環境や複合機、会議室、休憩スペースなどが備えられているのが一般的なシェアオフィスの形です。オフィススペースについてはフリーアドレスといって広いスペースのなかで好きな席に座って仕事ができるタイプや、自分専用のブースや部屋を使えるタイプもあります。

こうしたシェアオフィスが目指しているのは、先ほど指摘した「会社でも自宅でもない場所」の提供です。かねてよりIT業界などではノマドワークという考え方が浸透しているので、こうしたシェアオフィスやコワーキングスペースを活用する人が増えてきていますが、コロナ禍の影響によってそれが他の業界にも一気に広まっているといえます。

シェアオフィス需要の高まりから、大手不動産会社が空室になっているビルを借り上げて、シェアオフィスとして提供している事例も増えています。複数の大手不動産会社が乗り出しているということは、それだけ有望なビジネスモデルであると見込んでいるからです。

野村不動産、東急不動産のシェアオフィス事例

大手不動産会社が手がけているシェアオフィス事業について、2つの事例をご紹介しましょう。

野村不動産「H1T」

野村不動産が展開している「H1T(エイチワンティー」は、時間貸しのサテライト型シェアオフィスです。東京、大阪、名古屋など主要都市に多くのシェアオフィスを展開しており、2020年11月30日現在で59カ所に展開中です。最小利用単位は15分からで、必要な時間だけ必要なスペースを利用することができます。もちろんネット環境をはじめとするオフィス機能はしっかりと完備されていて、文具も自由に使用することができます。

東急不動産「ビジネスエアポート」

「エアポート」というサービス名は、国際空港のラウンジをイメージした空間を作るというコンセプトに由来しています。サービスオフィスといってプライベートオフィスとして使用できるプランと、フリーアドレスのプランが用意されていて、それぞれの用途に応じて使い分けが可能です。東京の各地に拠点を設け、2020年12月現在の拠点数は15カ所です(オープン予定含む)。

オーナー目線でのシェアオフィス運営

不動産投資を手がけるオーナー目線でのシェアオフィスについても考えてみましょう。不動産投資というとアパートやマンション経営というイメージをお持ちの方にとって、シェアオフィスはあまりなじみがないものかもしれません。しかし、ここまでの解説でもお伝えをしたように働き方が多様化するなかで、さらにコロナ禍によって背中を押されるようにテレワーク化が進行しています。そんな時代に適切なワークスペースを提供することは、とても有望なビジネスモデルといえます。

そこで、オーナー目線でシェアオフィス運営のメリットとデメリットを整理してみました。

シェアオフィス運営のメリット

  • 新たなオフィス需要を取り込める
  • 内装をリノベーションするため築古物件であっても不利にならない(そもそも利用者は築年数を気にしない)
  • 手軽に利用できる形態なので利用者の募集が容易である
  • 開業コストが安い

シェアオフィス運営のデメリット、注意点

  • 立地条件による影響が大きい
  • 意外に対象となる職種が限られてしまう
  • 将来的な競争の激化が予想される

このようにメリットとデメリットを整理してみると、「比較的手軽に始められるが、思っているほど簡単なものではない」となります。特にシェアオフィスは立地条件が重要なので、利用者が仕事だけでなく「ちょっと出かける」といった行動パターンに合致するような場所にあることが望ましいでしょう。逆に考えると、立地条件に恵まれているものの日当たりや形状、築年数などの問題で不人気になっている物件であれば、シェアオフィスによって再生できる可能性は十分にあるといえます。

今後さらに需要が増すことで市場の拡大が予想されるシェアオフィス。今後さらに新規参入が増えてくる前に「一日の長」を獲得するには、コロナ禍がひとつの契機を与えてくれていると考えることもできるでしょう。

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